世界のカロリーの12%はロシアとウクライナから ~ 食料・エネルギー安全保障

金融・経済リテラシー
写真:Chris Ratcliffe/Bloomberg

英エコノミスト誌3月12日号にはショッキングが数字が並んでいる。「ロシアとウクライナは世界1位と5位の小麦輸出国で、世界の年間販売量の29%を占める」「両国は大麦・トウモロコシ・ヒマワリなど家畜が消費する穀物の輸出国トップ5」「肥料の3大要素である窒素・リン酸・カリのひとつカリウムは、20%がロシア産で、親ロシアのベラルーシ産も18%を占める」・・・

ウクライナの国旗は、青空の下に延々と続く黄金色の小麦畑を象徴していると言われるが、上記の数字は、ロシア・ベラルーシを含めた今回の紛争地域が、実は小麦などの人間の食料だけでなく、全世界の農業に欠かせない肥料やたんぱく源としての家畜を育てるための飼料の一大産地であることを示している。エコノミスト誌の言うように「両国を合計すると世界で取引されるカロリーの12%を輸出している」のだ。私たちは、今回の紛争が長引けば日本の食料安全保障にも大きな影響が及ぶことを覚悟する必要がある。

3月22日には地震と寒波の影響で関東や東北などに初めて「電力需給逼迫警報」が発令され、政府が国民に節電を呼びかけたが、ウクライナ情勢は日本のエネルギー安全保障にも影を落とす。

象徴的な例が、極東ロシアの石油開発事業「サハリン2」問題だ。同プロジェクトは、ロシア国営のガスプロムが50%、英国シェルが27.5%、三井物産(12.5%)と三菱商事(10%)がそれぞれ出資し、年間1000万トンのLNGを生産する巨大プロジェクトで、東京電力などの日本の電力会社やガス会社が長期にわたり購入する契約を結んでいる。

日本のエネルギー供給を長期安定的に担う重要なプロジェクトだが、第2位株主の英シェルが同プロジェクトからの撤退を発表した今、日本の商社2社の動向が注目されている。ここで、同プロジェクトから仮に日本が撤退した場合の影響について、3月22日付日本経済新聞の記事等に基づいて考えてみよう。

日経新聞によれば、「サハリン2の輸入価格は単位熱量あたり10ドル、一方アジアのLNGのスポット(随時契約)価格は60ドル前後。仮にサハリン2からの調達は600万トン全量をスポットで賄うとすると、1.8兆円の追加コストになる」という。この1.3兆円という金額は、2021年の日本の年間総LNG輸入の対価が4.3兆円であることを考えると巨額だ。単純計算で、LNG調達のための支払い額は3割以上増える計算となり、結果、企業や消費者が負担する電気やガスの料金が上昇することはほぼ確実だ。

ウクライナを支援し、ロシアと敵対することは、このような食糧やエネルギー調達上のリスクを孕む。

政治的・人道的な正しさの追求と、こうした食料・エネルギー安全保障上のリスクを負うこと、あるいは不利益を被ることはセットであることを認識しておきたい。

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